私は過去に1回だけ派遣社員として働いたことがある。10社のうち、唯一1社のみだ。当時私は33歳だった。派遣社員として9ヵ月働いたのちに、正社員として就職した。結構、余裕だった。その時、いかにして派遣社員から正社員への帰還を果たしたのか、ここで共有しておきたい。
かつて一度だけ、33歳のときに派遣で働いたことがある
私は33歳のとき、編プロで働いていた。そして2ヵ月の試用期間をもって退職を申し出た。私はそれまでに何度も試用期間で会社を辞めたことがあったので、そのときもあまり大きな痛痒を感じなかった。
しかし途方に暮れてはいた。何しろ無職なのだ。途方に暮れないわけがない。
私の編集スキルはお寒いものだった
ところで編集者の中には、紙媒体のみで勝負する本物のプロフェッショナルがいる。一方で、ネット媒体に特化した本物もいる。そしてその間に挟まれているのが、どっちつかずのなんちゃって編集者(笑)である。世の中にはたくさんの編集者(笑)がいる。その中の一人に、大変遺憾ながら、私も含まれている。
私は33歳までは紙媒体専門だった。特に特殊技能があるわけでもなく、スキルを積み上げてきたわけでもない。自分が編集者なのかどうかすらわからなかった。ただ出版社や編プロに勤めてきただけの、小間使いだ。
ITスキルを身につけるためにスクールへ
しかし、33歳のとき、妙案を思いついた。このまま紙媒体にいても編集者(笑)のままだ。しかし、5流の編集者(笑)でもそこにITスキルが付加されたら、ハイブリッドな有能な人材にステップアップするのではなかろうか。少なくとも、IT系の編集者のほうが紙媒体の編集者よりも、絶対数が少ないので、自分の不出来が露見しづらいのではないだろうか、と考えた。実に策略的である。
そうして私は、IT系のスキルが学べる夜間スクールに通うことになった。程なくして、派遣の仕事も決まった。夜間にスクールに行くので、日中はある程度融通の利く職を探していた。派遣の仕事は一瞬で決まった。今まで経歴上は、編集者として働いてきたので、それが企業側に評価されたのだろう。
9カ月のスクール通いでイラレなどを学んだが……
派遣として9ヵ月働いた。同時に、スクールにも9ヵ月通った。そこで学んだことはイラストレーターやフォトショップの使い方などだ。
2021年現在であれば、IT系のスキルと言えば分析スキルなどを思い浮かべる人も多いかもしれない。しかし、2016年の私は特段何も考えていなかったので、とりあえずイラレとかいじれたら良いかなという、浅薄な考えのもと、スクールを選び通った。
結果、その後の仕事にはまったく生かすことができなかった。同時に5年たった現在において、イラレやフォトショのスキルの知識は完全に消え去った。このスクールに通っていたことを知っているのは、当時交際していた女性(現在の妻)だけだが、結婚した今となってはなんとなくスクール時代の話はタブーになっている。
スキル(笑)を身につけて正社員の職をゲット
学んだ内容は対して実にならなかった。一方で、派遣社員から正社員への就職はスムーズにいった。
なぜなら当時も今も、ある業界においては、編集職の仕事はあるからだ。ネット系編集者の仕事先は、ニュースメディアのみではない。むしろ、それ以外のほうが多い。
例えば、「自社サイトを運営している企業」「自社サイトを運営している企業から仕事を受けている制作会社」「自社でホワイトペーパーやブログを制作している企業」などだ。
オウンドメディア全盛の現代にあって、企業ではなにかしらのサイトを運営している。そのときに、「編集者」なる職種は重宝されるのである。たとえ編集者(笑)でもエセ編集者でもなんちゃって編集者でも問題ない。
少なくとも、編集経験のない自社の社員よりも、編集経験のある求職者のほうが、「なんかすごい」となるのである。
利用した転職サービス・エージェント
派遣から正社員への戻る際、私は「マイナビ転職」「リクナビNEXT」「Find Job」「リクナビエージェント」に登録した。ほとんどすべてにおいて、かつてないほどの確率で書類選考に通った。今までは出版社や編プロ、まったくの異業種への応募が多かったが、このときは「企業のオウンドメディアのコンテンツを作るIT企業」に絞った。
編集者やコンテンツを作る人材が不足している企業を狙い撃ちしたかっこうだ。よって、私のような「紙もITも対応できる」とする人材は、とても評価が高かったのだ。
新しい会社に入ってしまえば後は「ハッタリ」でなんとかなる
これは何も編集職だけに、限った話ではない。今までやっていた仕事に手詰まりを感じた場合、新たなスキルを付加するだけで、新しい業界で優位性を得られるということだ。
私のように、ITスキル(笑)を付加するのもよし、FPなどファイナンス系のスキルを付けるのも良いし、英語力をアップさせるのもいいだろうし、より専門的なプログラミング、AI、デザインなどを学ぶのもよい。
大切なのは、新しい業界にいかに入り込むかだ。編集について無知な人たちの中に、編集者(笑)が入り込むと、信じられないほど自分が重要人物ととらえられていることに驚く。
これはデザイナーの友人も同じことを言っていた。デザイナーがいない会社に入社すると、おそろしいほど期待される一方で、それ以上に尊敬され信頼されると。そうなれば、社内で一気に要人扱いされる。あとはハッタリだ。
「編集者のあの人が言ってるから正しいのだろう」「デザイナーがああ言っているのなら確かなはずだ」「さすがは編集のプロ」「さすがデザイナーは違うなぁ」など、勝手に勘違いしてくれるのだから儲けものである。
まとめ
派遣であれ正社員であれ、ある程度の経験を積んでいるのであれば、そこに新しいスキルセットを付加するのがよい。
そうすれば新しい業界や会社に入り込みやすくなる。実際にスキルが身につくかどうか、使えるか否かは二の次だ。
相手は自分たちが弱い点、詳しくない点を補うために新規の人材を補充したいのだ。そこを突くのだ。編集、IT、デザイン、営業……。こちらのほうが詳しいのだということを、常に相手に意識させ、ハッタリをきかせればなんとかなる。
相手のウィークポイントを突いて、正社員の椅子をつかみ取ろう。