冬は退職の季節だ。なぜなら朝から憂鬱で出勤がだるいから。春は転職の季節だ。なぜなら春は再生の季節だから。夏は離職の季節だ。なぜなら暑くて働いている場合じゃないから。秋は1年で最も心地よい季節だ。よし、転職しよう──そう思ったとき、ふと気になるのが退職の理由だ。明確な理由があれば良いのだが、実際の話、なんとなく会社を辞めたいと考えている人もいるだろう。そういったとき、上司にどのように伝えればいいのだろうか。ここでは、上司はもちろん、自分さえも納得させるまっとうな退職理由を本音と建前に分けて紹介する。
本音の退職理由18選
勤め人の多くは会社を辞めたいと、一度は思ったことがあるだろう。辞めたい理由は種々雑多だ。オーソドックスな退職理由を挙げれば以下のようなものがある。いわゆる、本音の部分である。
- 薄給だから
- 福利厚生が貧弱だから
- 残業手当はもちろん、手当などというものが一個もないから
- 上司や上役や社長が嫌いだから
- 同僚が嫌いだから
- 仕事がつまらないから
- 仕事が自分に合わないから
- できると思った仕事が全然できなかったから
- 会社までの通勤時間が長いから
- テレワーク時代なのに週5で出勤させられるから
- 会社のトイレが汚いから
- ランチを食べる場所が少ないから
- 全然昇進しないから
- キャリアアップの可能性が絶無だから
- 労働時間が長すぎるから
- 会社が不衛生だから
- 妻に辞めろといわれたから
- ママに辞めろといわれたから
はっきり言って、会社を辞めたい理由は星の数ほどある。言い換えると、会社を辞めたいモードになった場合、もはやわざわざ退職理由を探す必要などないのだ。
「本音」の退職理由は、他者からすれば、他愛もないあるいはくだらない理由にうつるかもしれない。
しかし、当人からすれば、それは死活問題である。会社のトイレが汚いから精神を病む可能性もあるし、仕事がつまらなさすぎて、職務中にけいれんを起こすこともあるだろう。
建前上の退職理由12選
一方、上司に退職を告げるときには、本音の退職理由をそのまま伝えるわけにはいかない。なんといっても、会社員とは社会人であり、常識と良識をわきまえた社会的な存在だからである。
「このへんいなか過ぎてランチを食べる店が全然ないんですよね。いわゆるランチ難民ってやつです。そういうの、私的にはつらいので、ここは思い切って会社を辞めます」
というのは通じないだろう。
上司に退職を告げるときには相応のフォーマットを使って、極めて形式的な理由を伝えるのが良い。例としては下記の通りだ。
- 新しい仕事・分野にチャレンジしたい
- キャリアアップのため、新たな環境に身を置きたい
- 将来を考えて留学やスクール通いを考えている
- 仕事内容のミスマッチを解消したい
- 家族を養うために、今よりも高い給与を得る必要がある
- 労働時間が長すぎて、プライベートや心身に影響が出てきた
- 会社の経営方針の変化についていけなくなった
- 結婚する
- 実家に帰る
- 起業する
- 家族の介護のため時短で働く必要が出てきた
- 体調不良で休養が必要になった
これらの「建前」は、上司に退職を告げるときに使える。
上司も、こういった理由を面前でいわれたら、否定はできない。家族や体調のことはもちろん、キャリアアップや留学など、一見極めて自己中心的な理由でも、一人の社会人として、退職希望者が意思を持って伝えた理由は、尊重されてしかるべきだ。
引き留めがあるかもしれないし、嫌みを言う上司もいるかもしれない。
しかし大丈夫だ。こちらは、社会人としてのマナーをわきまえている。常識の範囲内で退職を伝えたのだ。
私が上司に告げた退職理由10個
私はこれまで10社の企業を退職してきた。ここで記憶をひもといて、自分が上司に告げてきた退職理由を挙げる。
・1社目
職場になじめなかったので辞めます。
・2社目
待遇が不十分です。給料が安いので転職します。
・3社目
自分のスキルでは対応できませんでした。ご迷惑をおかけするのも忍びないので辞めます。
・4社目
新しい仕事にチャレンジしたいと思います。
・5社目
新しい仕事にチャレンジしたいと思います。
・6社目
こんな環境で働きたくない!
・7社目
ちょっと給料が安すぎて食っていけないです。
・8社目
社風が合わないです。ごめんなさい。
・9社目
新しい分野に挑戦したいと考えています。
・10社目
フリーランスになりたいので辞めさせてください。
ここで注意していただきたいのが、すべてのケースで、必ずしも上述した「建前」の退職理由を伝えていないということだ。
例えば、6社目や8社目は、心底うんざりしながら、本音をぶちまけたケースだ。このような場合、基本的に前任者もその前もみんな同じ理由で離職している。会社や上司に取っては年中行事みたいなものだ。だからすんなりと辞めることができる。
つまり、「本音」のほうを伝えた方が、時にはうまく退職できるケースもあるということだ。
この辺は、上司との関係性や、退職を伝えるまでの自身の態度などを勘案し、「本音」がいいのか「建前」がいいのか判断すべきだ。自身の態度とは、上司との面談前にすでに休職気味であったり、明らかにやる気がない態度を見せていたり、仕事中ずっとYouTubeを見ていたりといった、退職のサインが出ていたか(出していたか)どうかだ。
上司も鈍感な者ばかりではない。部下が面談の機会を設けてくれとリクエストした時点で、おおむね察しているはずだ。その場の温度感なども加味して、効果的な退職理由を告げてもらいたい。
まとめ
私は、会社に対して一つの確信を持っている。それは次のようなものだ。
「会社は辞めるためにある」
そうなのだ。会社は辞めるためにあり、入社したときにはすでに退職も視野に入れていなければならない。出勤初日は緊張や不安にさいなまれる。しかし、いつか訪れる退職日を考えたら、少しは気持ちも上がってくるというものではないか。
会社がいやになったら、上述した「本音」と「建前」の退職理由から、適当に自分に合うようなものを見繕い、その場の空気で、ある程度神妙な顔で上司に告げれば円満退社が叶うだろう。叶わないかもしれないが、それは私のせいではない。退職を恐れず、最良の職場を探す旅に出発してほしい。