働きたくない

辞める気がないのにも関わらず退職を臭わせることで昇給を勝ち取る方法

欧米各国がここ数年で平均所得を増加させている一方で、日本は横ばいか微減だ。インフレ率2%の目標達成もままならない政府、中央銀行の愚鈍な施策に加えて、企業の頑張りも足りない。それでも大手企業は良い。ベースアップの団体交渉で毎年基本給が上がる。しかし中小零細企業は蚊帳の外だ。多くのサラリーマンにとって絶望の色は濃くなるばかりだ。そんな時は自主的な交渉によって、昇給を勝ち取ろう。ポイントになるのは、「辞めちゃうよ?」という臭わせだ。

日本だけ給料が上がっていない

全労連の調査によると、1995年から2016年の20年間で、欧米各国の実質所得は右肩上がりに増加している。たいして日本はジョークのように右肩下がりで推移している。

出典:全労連『実質賃金指数の推移の国際比較(1997年=100)』

国税庁の『民間給与実態統計調査』の「(第9図)平均給与及び対前年伸び率の推移」を見ても、ここ十数年の給与伸び率は悲惨な状況に陥っていることがわかる。

大企業勤めならまだしも、中小零細企業に勤めている弱小企業戦士にとって、将来はお先まっくらだ。そもそも零細企業勤めだと、月給20万〜25万ぐらいで、給与なし手当なしなどざらだ。

私がそうだった。毎年基本給は安定の据え置き、物価が上がって給与が横ばいということは、年々生活が厳しくなるということだ。

中小零細企業のヘボリーマンでも存在価値はある

ここは一念発起して転職しようと考えるのが自然だ。しかし、待ってほしい。賃金を上げる方法は転職以外にもある。特に社員数20名以下の中小零細企業ならば、問題を解決するウルトラCの施策がある。

そもそも現在勤めている会社で、クビにならず、閑職に追われているわけでもないのなら、少なくとも必要な人材ではあると思う。仕事内容がいかにブルシットジョブ(くそ無意味な仕事)でも、非生産的でも、誰でもできる仕事でも、そんなことは関係ない。

社員であれ契約社員であれ、長く勤めていることはそれだけで既得権益を獲得できていると言える。

しょうもない仕事を強烈に属人化し、部下や同僚に伝授しないことで、自分のプレゼンスを高めているベテランや上司が回りにたくさんいるはずだ。良くも悪くも、彼らは自分のポジションを確保している。

そして、繰り返しになるが、現在勤め人としてのポジションを得ているのならば、程度の差こそあれ誰でも、自分にしかできない仕事を抱えているはずだ。それは価値だ。

辞めたいと臭わせることで昇給を勝ち取る

昇給しない、ボーナスがないならば最終手段に出れば良い。ある日、上司にビジネスチャットを送る。「ちょっとお話があるのですが」、と。

するとどんな愚鈍な上司でも、これはのっぴきならない事情を抱えた部下が、いよいよ退職の相談に来たなと感づくはずだ。

そして、面談当日、「辞めたいのですが」と申し出る。すると、どうなるか。おそらく、上司は困るだろう。そして上司の上司に相談するはずだ。中小零細企業ならば、社長が出ばる。そして慰留工作が始まるのだ。

工作の最初は、仕事内容の変更や仕事量の調整、あるいは配置換えなどを提案されるかもしれない。しかしそんな話に真面目に聞き入る必要はない。「いやでも、そんなことではなく……」ともごもごとまごつけばいい。

しばらくして、彼等が提案してくる。「給与などの待遇を改善しよう」と。

その提案額が満足のいくものであれば、渋々といった表情で「じゃあ、残っちゃおうかな〜。そんなに言うんなら、もう少し頑張っちゃうおうかな〜」と言って、会社に残ればいい。

不満足ならば、不満足なまましばらく働き、いよいよ本当に耐えられなくなったら退職すればいい。

私は1度成功し、2度目は失敗した

私は過去に2度、この手を使ったことがある。

一度目は25歳のとき。社員は自分だけであとは、社長、経理の女性、フリーランサー数名という小規模の会社だった。むろん、唯一の正社員である私が抜けたら、おおごとだ。そういう意味で、私はかなりいいポジションについていたと言える。

当時の月給は20万円だった。ボーナスなし。手当も何もない。残業代など都市伝説だった。いつも手取りが17万円ぐらいだった。当時はまあ給料なんてこんなもんだろと思っていた。世間知らずだった。

しかしあるときに友人の給料、というかボーナス額や手当額などを知って絶句した。彼等は、年収にしたら私の倍近くを手にしていた。

そして私は満を持して社長に、「辞めたい」と申し出た。そのときは退職届を提出した。

結果、その日のうちに月給が3万円アップした。年収にしたら36万円アップだ。普通の会社では考えられないアップ率だろう。その後1年以上その会社にとどまった。

2回目にこの妙手を使ったのは33歳のときだ。驚くべきことにこのときも月収は20万円ちょっとだった。手当やボーナスもなし。私はいつもこのようなへっぽこの会社に勤めていた。社員数は5名の小さな企業だった。

同僚がどんどん辞めていく中、ついに私が最後の一人になった。そして例によって、「辞める気がないのにも関わらず退職を申し出ることで昇給を狙う」という、伝家の宝刀を抜いた。

結果、「辞めていいよ」という回答を頂いた。33歳で、無職になったと言うわけだ。

これならば薄給でも残っておけば良かったと、一瞬は思ったが、結果的には転職先はすぐに見つかったので傷は浅かった。

まとめ

以上のように、「辞める気がないのにも関わらず退職を申し出ることで昇給を狙う」という妙手は、諸刃の剣だ。

うまくいくときもあればいかないときもある。私の経験では成功率は50%だ。

しかし中小零細企業に勤めていて、今後も薄給人生まっしぐらならば試してみてもいいだろう。最悪、退職するだけだ。うまくいけば、もっと条件のいい会社に転職できるかもしれない。

また、昇給してもその金額が雀の涙というケースもあるだろう。1万円程度の昇給ならば、そのまま退職するのがいい。最低でも月額3万円ぐらいの昇給はゲットしたい。

とにかくサラリーマンとはタフな職業だ。

使用者(雇用主)は圧倒的に優位な立場だ。こちらもさまざまな方策を使って、揺さぶりをかけて、少しでも条件のいい待遇を引き出したいものだ。頭の固い上司しかいない会社ならば、光の速さで転職だ。